シャツやセーターに使われる素材はバラエティー豊かで、時にはその着心地に感動することさえあるのに、靴下で同じような経験を持つ人は少ないのではないだろうか?
その原因の一つに、靴下に使用される「糸」がある。
湿度の高い日本において、紳士靴下の素材は昔から通気性と吸湿性の高い綿が良いとされているため、その多くは綿素材のバリエーションで作られてきた。また一部の高級品を除いては、市場の平均価格から大きく逸脱しないよう、糸の価格はある程度抑えられている。
idé hommeの糸探しは、もっと自由に靴下を作りたいと思うところから始まった。
最初に手掛けたLDN071(カシミア100%)を開発するきっかけは、イタリアで魅了されたカシミア靴下だった。
帰国後すぐに国内で同様の糸を探すも、強く撚りをかけた細いピュアカシミアはなかなか見つからない。諦めかけた頃、ようやくある糸商社を介して、海外から取り寄せることができた。
糸の作り手は、こんな高級糸が靴下に採用されるのは初めてだと驚き、仕上がりはあのイタリアで手にした靴下に劣らない満足のいくものとなった。
運命の出会いとも思えるこの糸は、期待を大きく上回る品質だった。それまで抱いていたカシミア製品のイメージは、洗濯機で洗うと風合いを損ない、毛玉ができやすく、切れやすいというもの。ところがLDN071は、洗濯機で洗うことで更に柔らかさを増し、艶を失うこともなく、丁寧に履けば簡単に穴があくこともなかった。発売後すぐに、このカシミア靴下はブランドの軸となった。
次に運命の出会いを果たしたのは、幻のコットンとなりつつある世界最高品質を誇るエジプト超長綿「GIZA45」。
紳士の高級シャツでは有名だが、そのシャツの世界でも希少性は年々増している。その貴重な糸を極限まで細く撚り、綿の強さとシルクのような美しさを兼ね備える靴下をつくった。こちらのLDN011もカシミアと並びすぐに人気商品となったことは言うまでもない。
idé hommeでは、靴下の固定概念にとらわれることなく、洋服と同じように心から気持ち良いと思える素材を探し続ける。